# --- Kifu for Windows (Pro) V6.32 棋譜ファイル --- 開始日時:2010/01/07 10:00 棋戦:第2期天河戦本戦1回戦 持ち時間:2時間 消費時間:91▲112△120 場所:駒込サロン 手合割:平手   先手:蛸島彰子五段 後手:渡部愛TJP 手数----指手-- *本局はNTTル・パルク杯第2期天河戦本戦トーナメント蛸島五段−渡部TJP戦。持ち時間は各2時間、使い切ると1手60秒の秒読み(チェスクロック使用)。 *本局の勝者は準決勝戦で石橋四段と対戦する。 *振り駒の結果、歩が4枚出て蛸島五段の先手に決まった。 *(棋譜・コメント入力=銀杏) 1 7六歩(77) *蛸島彰子(たこじま・あきこ)五段は1946年3月19日生まれ、東京都杉並区出身。LPSAの相談役を務める。LPSA番号 1 *日本将棋連盟より初の女流プロ棋士として認定され、将棋教室や大盤解説会の聞き手として普及活動に取り組んだ。74年に女流棋士制度が発足すると、女流三段として女流名人位戦に参加し、初代女流名人となった。88年11月、女流五段。奨励会時代から中飛車を愛用し、攻守にバランスのとれた粘り強い棋風。女性を対象にした将棋教室や、書籍・観戦記執筆など幅広く普及につとめている。座右の銘は「続ければ人生」。趣味は「ガーデニング」。 2 3四歩(33) *渡部愛(わたなべ・まな)TJPは1993年6月26日生まれ。北海道帯広市出身。LPSAツアーライセンス番号1 *アマチュア時代は第40期女流アマ名人戦準優勝、第46期赤旗名人戦全国大会予選通過、第1回女子アマ王位戦第3位などの活躍。2009年4月1日、ツアー女子プロとしてデビュー。第27回1day・シュヴァリエカップで初優勝を果たした。 3 6六歩(67) *NTTル・パルクは天河戦だけでなく、LPSA将棋ツアーにも協賛している。LPSA将棋ツアーでは女子アマ王位戦も行われ、優勝者は天河戦に招待される。 *第1期天河戦では第1回女子アマ王位の成田弥穂さんが決勝まで勝ち進んだことは記憶に新しい。 *第2回女子アマ王位の小野ゆかりさんは予選通過の活躍。本戦1回戦では石橋四段に敗れた。 4 3三角(22) *この出だしは相振り飛車を含みにしている。 5 7七角(88) *両者は1dayトーナメントで2回対戦して1勝1敗の対戦成績。 *2009年5月に行われた第24回1day・ファンクラブカップでは蛸島五段が、第27回1day・シュヴァリエカップでは渡部TJPが勝っている。 *戦型は、ファンクラブカップでは蛸島五段のゴキゲン中飛車に渡部TJPの居飛車。シュヴァリエカップでは相振り飛車となっている。本局ではどのような戦型になるだろうか。 6 2二飛(82) *渡部TJPは向かい飛車に構える。1度、駒を盤外に落としてしまい、「すみません」と謝ってから2二に飛車を置いた。 *大きな勝負を前に、少し緊張している雰囲気も感じられる。 7 6八銀(79) 8 4二銀(31) *蛸島五段は藤田麻衣子1級と鹿野圭生初段を破って予選通過。 *渡部TJPは島井咲緒里初段と中倉宏美二段を破った。 9 6七銀(68) 10 2四歩(23) 11 4八銀(39) *近年の相振り飛車では重要な手。先に▲3六歩〜▲3七銀と矢倉の骨組みを作り、2筋を受けてから飛車を転換させる意味がある。 *すぐ▲8八飛は△2五歩から△2六歩と歩交換を許す。 12 4四歩(43) *△5四歩〜△5三銀と構える指し方も考えられた。 *本譜の△4四歩は△4三銀〜△5四銀と腰掛け銀に構えることが予想される。 13 3六歩(37) 14 4三銀(42) 15 3七銀(48) *これで2筋は丈夫になった。 16 6二玉(51) 17 8六歩(87) 18 7二銀(71) *消費時間は蛸島5分、渡部TJP7分。 *渡部TJPは手のひらに向けて「はぁ」と小さく息を吐いた。渡部TJPの地元北海道ほどではないが、東京も寒い朝だ。 *蛸島五段が4分以上考えている。 19 7五歩(76) *意欲的な位取り。 *△7四歩〜△7三銀とする後手の矢倉を阻止した意味がある。 20 5二金(41) 21 8五歩(86) 22 7一玉(62) 23 8八飛(28) *相向かい飛車となった。 24 2五歩(24) 25 3八金(49) 26 2四角(33) *先手はまだ居玉。先手玉が安定する前に積極的に動こうとする。 27 5八金(69) 28 3五歩(34) 29 同 歩(36) 30 同 角(24) *席を外していた隣で対局中の藤田麻衣子1級は、本局の様子を見てから席に戻った。 31 4九玉(59) 32 1四歩(13) *角を広くしている。 33 8四歩(85) 34 同 歩(83) 35 同 飛(88) 36 8三歩打 37 8六飛(84) *ここ数手はパタパタと進んだ。 *相振り飛車では、相手が低い陣形(美濃、穴熊、金無双)のときは浮き飛車、相手が高い陣形(矢倉、銀冠など)のときは金銀を圧迫を避けて引き飛車に構えることが多い。 *後手陣は美濃囲いなので、ここでは浮き飛車。次に▲6五歩と突ければ飛角が一気に働いてくる。 38 1三角(35) *△1四歩から狙っていた引き場所。 39 6五歩(66) *10時30分ごろの局面。消費時間は蛸島五段14分、渡部TJP18分。 *▲8六飛からの継続手。飛車は縦横に利き、角道も開いた。 * *※この手が利いたのが大きかった。前手△1三角では△6四歩と位を保つべきだった。 40 3二飛(22) *3分ほど考えて飛車を寄せた。角筋を避けたり、▲3六飛を警戒している。 *蛸島五段がしばらく考えている。▲3九玉、▲3六歩、▲9六歩…。指したい手が多い。蛸島五段の視線は自陣だけでなく、敵陣にも向いている。数手後に攻めることも考えているのだろう。 41 7四歩(75) *10分近い熟考でいきなり仕掛けた。すばやい動き。△同歩なら▲5五角△7三桂▲7五歩と攻め立てるのだろう。 *蛸島五段は着手してから、湯のみのお茶を飲んで席を立った。渡部TJPもここで長考。▲7四歩は機敏な仕掛けだったか。 42 同 歩(73) *歩を取れないようではすでにつらい。強く歩を取った。 *渡部TJPはうんうん、うなずきながら考えている。 *蛸島五段は駒台の歩をつまんだが、駒台に戻した。まだ、持ち時間は1時間30分以上ある。しっかり読みを入れるのが良策だ。▲5五角以外に▲7五歩もあるようで、それの比較に時間をかけているようだ。 43 7五歩打 *11時ちょうどに指された。消費時間はともに30分。 *△同歩なら▲5五角△7三桂▲7四歩が厳しいという読み。 *渡部TJPは左手を顔に当てて考えている。激しく攻め合いに出るか、受けに回るか。どの方針で指し進めるかの分岐点だ。 44 3三桂(21) *7分ほど考えて渡部TJPが選んだのは攻めの方針。 *▲7四歩△4五桂と進めば、「あなたはあなた、私は私」の激しい攻め合いが予想される。 *難しい局面が続き、両者5分以上の考慮が続く。受けるなら▲4六歩だろうか。 45 5六銀(67) *8分ほどの考慮で指された。攻めるなら▲7四歩や▲5五角も考えられた。 46 5四銀(43) *銀を活用しながら▲5五角を消す。▲4四角が見えているが、△4五銀▲同銀△同桂と進めば、銀がさばける分、単に△4五桂とするよりも攻めに迫力が出る。 47 4四角(77) *蛸島五段、強く踏み込む。先手は後手に比べて玉が不安定なので、局面の舵取りに神経を使う。 * *対局前に確認していなかったが、渡部TJPは持ち時間2時間は本局が初めてだろう。持ち時間の使い方は難しく、それも勝負のうちだが、ここまで蛸島五段42分、渡部TJP44分と蛸島五段と同じくらいのペースで持ち時間を使っている。 48 4三金(52) *時刻は11時25分。 49 7七角(44) *渡部TJPはなかなか7筋の嫌みが解消できない。 *△7五歩と取っても▲7三歩や(将来の)▲7四桂がきついからだ。 50 4五銀(54) *このタイミングでぶつけた。局面の流れがいよいよ激しくなってきた。両対局者の頬が紅潮してきている。 *蛸島五段は玉が囲いに収まっていないこと、渡部TJPは7筋に嫌みを抱えていることが弱点。その弱みを突いた方が有利に局面を進められそうだ。 *▲4五同銀は△同桂で後手の駒がさばけてくるので、▲5五角や▲5五銀だろうか。蛸島五段は12分以上考えている。 51 5五銀(56) *相手の言い分をホイホイと聞いていてはいけない。かれこれ14分の熟考で銀をかわした。逃げただけでなく▲4四銀や▲6四歩の攻めも見ている。 *時刻は11時50分。消費時間は蛸島五段59分、渡部TJP52分。 *渡部TJPは左手を口元に当てる、得意のポーズで熟考。しばらくして、ハンドタオルを口元に当てる。12時前に、渡部TJPが1時間消費したことを告げるブザーがなった。 52 5四銀(45) *10分以上考えて、しなやかに銀を引いた。一回かがんで、次に△4五桂と跳ぶつもりだろう。 *角換わり腰掛け銀では部分的に見られる指し方だ。 *蛸島五段の考慮中に昼食休憩時刻の12時10分となった。対局再開は13時。残り時間は蛸島五段53分、渡部TJP57分。対局再開の5分以上前から両対局者は席に戻っていた。 53 4六歩(47) *対局再開前に、二人とも午前中にカメラが回っていることに気付かなかったと話しており、まさに盤上没我での対局。 *蛸島五段は昼食休憩時に指し手を決めていたようで、13時になって対局が再開されるとすぐに▲4六歩を着手した。△4五桂を防いで自然な手だ。次に▲3四歩△同金▲5四銀△同歩▲4三銀となれば先手の攻めが決まる。 *渡部TJPはどのようにして攻め駒をさばくかが課題となっている。理想的な形で3三桂がさばければ、一気に後手が良くなるだろう。 54 4七歩打 *10分ほど考えて指された。 *▲同金左と取れば、△4五歩〜△4六歩が金取りになって攻めやすいということだろうか。4七歩は取らないのは、時限爆弾を目の前にして放っておくようなものだ。 *なんとも悩ましい手。 55 7四歩(75) *渡部TJPは前傾姿勢になり、右の人差し指の先を机に載せて考えている。 *△6五銀〜△7四銀と歩を回収できればうまそうだが。 *渡部TJPは考慮中に残り40分を切った。蛸島五段は残り49分。 56 2六歩(25) *嫌み嫌みと攻めていく。▲同銀は4八が薄くなるので指しにくい。 57 同 歩(27) 58 2八歩打 *△4五桂を決め手にして一気に攻めようとしているのだろうか。 *この桂取りは放置しにくい。金で取るべきか、銀で取るべきか。それが問題だ。 59 同 銀(37) *13時35分ごろの局面。残り時間は蛸島五段38分、渡部TJP37分。 60 6五銀(54) *先手陣の形を乱してから手を戻す。△4七歩といい、実戦的な指し回し。 *蛸島五段はやや前のめりのような格好で局面を考えている。 61 4七金(38) *落ち着いた大人の手。丁寧に指して流れを穏やかにすれば歩得が生きる。 *渡部TJPは盤面に集中して考えている。ほかのものは目に入っていない様子。 62 4五歩打 *渡部TJPは5分考えた後で、ピシッと鋭く歩を放ち、ペットボトルのスポーツドリンクを飲んだ。 *▲同歩には△同桂で攻めが続く読みか。 63 3五歩打 *「大駒は近づけて受けよ」。△同角と取らせることで、△4六歩▲同銀が角取りになる。渡部TJPは、考慮中に残り30分を切った。3五歩を残すと角だけでなく、3二飛も使いにくくなって、攻め方が難しくなる。 *後手の駒台を見ると弾切れ。そこで△3五同角や△7四銀で歩を補充したいところでもある。 *持ち時間が多いといろいろ考え出していつの間にか持ち時間がなくなっている、ということはよくある。渡部TJPは対局再開後も1手ごとに時間をかけており、気付けば残り22分。盤上を見据える眼差しは普段よりも険しい。 64 7四銀(65) *結局10分ほど考えて、後手陣にとって懸案の7四歩を取り払った。 65 4四銀(55) *△4四同金▲同角と進めば、▲5三角成、▲4三金、▲2三金と先手に楽しみが多い。 66 4二飛(32) *▲4三銀成△同飛なら駒がさばけてくるが。 *14時過ぎ、残り時間は蛸島五段28分、渡部TJP19分。 67 3三銀成(44) *こちらがあった。△3三同金▲同角成の展開は桂得の先手が良いだろう。 68 4六歩(45) 69 同 金(47) *蛸島五段に慌てた様子はない。 *△3三金▲同角成△4六飛は8六に飛車がいるのでうまくいかない。 70 7六歩打 *勝負手で迫る。 71 同 飛(86) 72 6五銀(74) *▲8六飛△7六歩▲8八角△3三金▲同角成△4六飛となれば後手が成功。蛸島五段はどこで変化するか。 *14時15分ごろ、蛸島五段は残り20分を切った。渡部TJPは残り13分。 *蛸島五段としては優位を拡大する手段を見出したいところ。 73 9六飛(76) *飛車が浮き駒にならない位置へ。 *ここなら飛車が取られにくい。△7六歩には▲4二成銀と攻め合うつもりだろう。 74 3三金(43) *渡部TJP、残り10分を切った。 75 同 角成(77) *ここで飛車が逃げ回るようでは後手が苦しそうだが、かといって、先手陣を攻めつぶすような手段はすぐにはなさそうだ。 76 4六飛(42) 77 同 飛(96) 78 3五角(13) 79 4一飛成(46) *76手目△4六飛が指されて10秒後にはこの局面へ。 80 4七歩打 *4一龍が攻防によく利いており詰めろではない。 *後手の美濃囲いはしっかりしていそうで、そうではなく、仮に▲7三歩△同桂▲6二歩△同玉▲5二金と進めば、いきなり詰み筋となってしまう。美濃囲い崩しに歩が利くと、冬の寒さが骨身にしみる。 81 5五馬(33) *▲8二金以下の詰めろ。こちらも厳しい攻めだ。 82 6四銀打 83 4五馬(55) *角取りの先手を取る。 * *※▲3七馬なら問題はなかった。この手のために、ひやりとすることとなる。 84 5七角成(35) *ドキッとする手。▲同金なら△4八金で先手玉が詰む。 *▲4八歩は△同歩成▲同金△4七歩で受けになっていない。 85 5九金打 *△4八金で危なそうだが大丈夫か。 86 4八金打 *渡部TJP、1分将棋に入った。 *蛸島五段は残り9分。 87 同 金(59) *金を取るとき、その金がポロッと盤外に落ちた。 *動揺が見える。 88 同 歩成(47) 89 同 金(58) 90 4七歩打 *これは大事件発生。▲5七金は△4八金で詰んでしまう。 *受け切りを狙っていたはずが、後手の攻めは簡単には振りほどけない形になってしまった。 91 3八玉(49) *反省して上部脱出を狙う。 92 4八歩成(47) 93 2七玉(38) *あれよあれよと城から逃げ出すことになった。 94 3五金打 *最後になって1一香・1四歩も頑張ってきている。 95 3二飛打 *△3五金が詰めろではないのを見越して詰めろ金取り。 96 5一金打 *詰めろを防いでこの一手といえる。 *蛸島五段としては、なんとか残せそうな局面。残り5分程度の中、読みを入れて考えている。 97 6三馬(45) *思い切ってダイブ。△同銀は▲8二金まで。ここで渡部TJPの投了となった。(1)△4二歩は▲同飛成△同金▲6一飛成△同銀▲6二金△8二玉▲6四馬△7三飛▲7一銀と追って詰み。(2)△4一金は▲6二金で詰み。(3)△6二歩も▲6四馬が詰めろではいけない。 * *終局時刻は14時50分。消費時間は蛸島五段1時間55分、渡部TJP2時間(チェスクロック使用)。蛸島五段が相振り飛車戦を制し、準決勝に進出を果たした。 * *85手目▲5九金打は蛸島五段のうっかりだったようだ。ひやりとしたが、逆転には至っていないようで蛸島五段は終局後にホッとした表情を浮かべていた。 98 投了 まで97手で先手の勝ち